鉄瓶を復活させる

スイスロザンヌ在住のL夫妻のお宅にお邪魔することが時々ありました。

ご夫妻は100年前に建てられた宿屋をご自宅にされています。ロザンヌに行くといつも泊めてくれた優しい夫妻。

夫妻のことについていずれ語りたいとも思いますが、今日はその奥様に感化されて手に入れた鉄瓶のお話をします。

奥様が、明るい瞳と花のような笑顔を持つノハドさんという方なのですが、彼女が毎朝それは重たい、でも小ぶりな鉄瓶で、リビア独特のお茶を入れて飲んでいたように記憶しています。

日本の鉄瓶よ、と笑った顔もふわりとして、なのに抜群の安定感!

そのすべてがとっても素敵で、ノハドのことを思いながら、帰国してすぐに南部鉄器の鉄瓶を買いにいきました。

お店の方も親切で、今デパートの鉄瓶の多くが、中をコーティングしたもので急須となっているため、直火には架けられないこと、鉄分を取れないことなどを教えてくれました。

ノハドは直火でお茶を入れていて、その古いコンロの風情とどっしりした鉄瓶のバランスが絶妙だったのです。直火に架けられることは重要条件です。

ついでに言うと、中をコーティングし鉄分が取れない鉄瓶って、重たいだけではないですか。

何万もする鉄瓶ですが、その時たまたまデパートで、直火にかけられるサイズも手ごろでしかも1万円以下の鉄瓶と出会ったのでした。

はじめて鉄瓶でお茶を飲んだ日のことは忘れられません。お水を甘く感じることと言ったら!

とても美味しくて、それからは、鉄瓶でお湯を沸かして飲むのが楽しみだったことを覚えています。

ところがコンロでお湯を沸かしていたことを忘れてお風呂に入ってしまったり、本を読んだりということを繰り返して、その鉄瓶で3回も空焚きをしてしまいました。あの頃は朝が人並みに早くて、夜は人並み以上に遅かったので、夜しかお湯を沸かさず、大事故にならなかったのは本当に良かったことでした。

鉄瓶は1回目はまだ大丈夫でしたが、2回目、3回目の空焚きで、すっかり赤さびてお湯を沸かしても、お湯はむしろまずい。。。実に美味しくない金属のすえたにおいのする鉄瓶に変わってしまいました。

とはいえ、買ったばかりで買い替えるのも残念です。復活の方法を調べ回って、インターネットで調べて、緑茶を淵いっぱい入れてお湯を沸かして一晩おいておくと、鉄が酸化してまた使えるようになるという情報を得ました。

緑茶パワーも、一回では効きませんでしたが、2回3回と繰り返すうちに、またその鉄瓶で飲めるお湯ができるようになってきました。でも、水をまろやかしたあの鉄瓶特有の良さはその後5年、10年たっても戻ってきませんでした。お湯は沸かせるようになったとはいえ、中は赤錆が目立つ鉄瓶でした。

そんな鉄瓶の10年がかりの復活秘話です。

ある日の洗濯機を掃除するために、重曹とクエン酸について調べたところ、クエン酸で赤さびが落ちる、という記事を見つけました。

「赤さびねぇ」

とは思ったものの、クエン酸を出したついでに鉄瓶(450ml)にクエン酸を大匙2杯入れて、一回沸かして一晩おいてみました。

するとすると、

確かに錆が反応している!

翌朝にはきれいにしました。作業を始めたのが夜遅かったこともあって、もっと長くクエン酸に漬けておけばよかったと思いましたが、赤さびはだいぶん落ちていました。

ここで思い立って、この鉄瓶でできるだけ茶葉を直接入れて、わかして緑茶を飲むようにしてみました。

するとすると!

はい、ご想像の通りです。最初は黒っぽいお茶が入っていたのが、だんだん緑っぽいお茶にもなってきたうえ、あの甘さが返ってきたのでした。

なるほど、緑茶はすごい。でも鉄瓶を復活させたいときは、さび落としを忘れてはいけなかったのです。

ちょっとした発見だったので、お伝えいたしますね。

困ったことがあったら是非お試しになってください。

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