フランスのメトロとRER(電車)

ようやく大人になりかけていたころ(20歳はまだひよっこですよ)、度々フランスに立ち寄りました。いずれの時も長くはなかったけれど、縁があったということなのでしょう。イル ド フランス、特に花の都と呼ばれるパリは文化や技術の中心地でもあり、探検して探検しつくすということない場所です。

それは日本の小さな片田舎もそうではあるのだけれど、これまでずっとパリ以外であったことなどないような顔をして、実は歴史的には新しい都で、変わらないような顔をしながら日々変わる、いう点でパリは面白い。

美しい国だった。美しい町だった。

Saint-Michel Notre-Dame

それなのに、光当たらないことからまず書くのは私が天邪鬼だからだと思います。

今日はメトロとRERのお話。

パリという大都会で迷子にならないためには、メトロあるいは国鉄RERを活用するのが一番です。ストライキが多く、工事も多く、利用できない線があっても、目的地に行きつけなうような停止はしないところがやはり首都。

悪名高いフランスのストライキですが、乗り換えたり遠回りすることはあっても、ちゃんと行きたいところには行けるようになっているので、もし遭遇してもあわてないでくださいね。

さて、ここではメトロもRERも一緒くたに電車と呼ばせていただきましょう。

電車では多くの出会いがあります。多くの場合一期一会ですけど、これがなかなか面白いんです。

フランスの電車といえば、車内といわず構内も含めて、楽器を弾く人は普通にたくさんいますし、物乞いの人もたくさんいます。身の上を書いたカードを座席において、後生だかたらこのカードを購入してください、とか、子供に回収に行かせたりとか。

人形劇を見たこともあります。あの頃パリで一番長かったメトロ13。パリ市内に戻るまでの30分間で二芝居くらいやってくれました。空いている座席がステージです!楽しくて楽しくて、お芝居が終わったときはお財布に入っている小銭を全部入れたことを覚えています。人形劇のおじさんも達成感にあふれた顔で回ってきましたし、そのときお金を入れた人は多かったはず。

演奏者のクオリティが、だいたいいつも高いのはモンパルナス駅です。それは上手にチェロを弾くおじさんがいました。また芸術の都パリだけあって、びっくりするところでびっくりする素晴らしい音楽に出会うことはままありました。人形劇は珍しいと思います。車内でしたし。

意外に多いのは、切符を持っていない人たちから協力を求められるケース。キセルですね。

メトロは一回構内にはいれば、出るときに切符はいりませんが、RERは入る時も出るときも切符が必要な、日本と同じ改札システムになっています。お金持ちでないところの私はだいたいいつも11回券を大体購入していました(10枚の料金で11枚)。メトロもRERもバスも同じチケットを使えましたし、公共交通機関の切符は、パリについたら一番に購入すべきものだと思います。

さてさて話は戻って、はじめてキセル頼まれたとき、頼んできたのは身なりもこざっぱりしたお嬢さん。私は目を疑ったし、耳も疑ったので、とっさに断ったことを覚えています(フランス語ができなくても、こういうのは通じるところが人類の実に不思議なところだと思ます)。しかし場数を踏むうちに、若者は割とキセルしていることが分かりました。小学生じゃぁないですよ、割にいい歳の若者です。まぁ、子供たちですけどね(繰り返しますが20歳は子供ですよ)。さらに協力を頼んでくるのはお嬢さんたち!どうも若者の男の子らは、改札をさっさと飛び越えるけれど女子らはキセルはするけど、歩いて通り抜けたい、という感じ。

今思うとそれなりに乙女心だったのかしら。。。でも協力者ってそんなにいつも見つかるのかしら。可愛いから断る人が少ないのかしら…。

それから浮浪者の皆さんに頼まれることも多かったです。こちらは生活も苦しいのだろうし、電車内で物乞いをする人は多いので、ともかく構内に入らなければ話にならない。最初はびっくりしましたし、男の人から声をかけられると怖く感じることもありましたが、断っても危害を加えられたこともなく、今は堂々と声をかけるのはいっそすがすがしいと思います。

カンボジアで手も足もない明らかに困っている人のコップにお金を入れることさえためらっていた私に、お金を入れることで、お互いのリスペクトは崩れないし常にちゃんとあるんだ、ということを教えてくれたフランスのおじいさんとの出会い以降、芸をして身銭稼ぐのは立派だし、ただ下さい、と言われるときも、お財布に小銭があれば、気持ちよくカンパできるようになっていましたが、キセルへの協力は、悪いことの片棒を担ぐようで、最初の頃は嫌でした。

しかし!これを大きく覆した経験がありました。

春に、久しぶりにダンフェール・ロシュロー(Denfert-Rochereau)に降り立った時、女性の浮浪者に声をかけられました。キセル依頼です。学習前だったので、いやいやいや、と断った私に、女性はしばらく身振り手振りで食い下がりましたが、どうやら私も切符を持っていないに違いない、と結論付けた模様。今度は自分で改札横のドアをあちこち押し始めました。そしたら、そのうち一つが開いたんですね。

女性、くるりと私を振り返り笑顔で手招き。ドアを押さえていてくれて、さぁお通りなさい、と言ってくれたんです!

にっこり(女性)に、その向こうには女性のお友達とみられるその他の浮浪者さんらの姿も。

「親切にされている!」というのが頭に浮かんだ最初の言葉。

で、えぇ、そうです。助け合いの精神に触れてしまって、うっかりお礼いいながら通ってしまいました。

そして、女性と別れて良く考えて、いったん出て切符買おう、と思ったのですが、これがRERで!

未使用回数券じゃ出れなくて!

私もあちこち歩きまわって、ようやく切符売り場に出ることができました。もうどうやって出たかは覚えてないですけど、やっぱり、どこかのドアが開いていたんじゃないかと思います。

キセルする人が絶えないのは、ひとまず頑張れば改札じゃないところがあちこち開いてるのもあるんでしょうねぇ。でもこの緩さは、フランスの豊かさと昔ながらのおっとりさがあるところなので、支持します。

受付がぶっきらぼうでも、たくさん待たされても、ともかく人間らしいのがフランスの良いところです。

私も助かったし。。。

ともかくあの親切を受けて以降、私は(防犯カメラとかに映って、犯罪協力罪とかに問われる可能性もあるので、さりげなく)キセルに協力するようになりました。どうせ探せばどっかの通路が開くのです。けちけちしないでその場で通してあげたって良かろう。

しかも、こっちが困っていると思ったら助けてくれる人たちなのだから、なおさら良し。

そして、RERから出れなくて困惑した経験で、自分はキセルを絶対しなくなりました。切符買えるなら買った方が心臓に良いです、絶対。

というわけで色々学んだ出来事だったわけなのですね。つまりは。

気楽なパリの、緩いメトロとRERでは、気楽な気持ちで、気に入れば小銭を入れたし、キセルには、相手がよほど垢臭くない限りは、協力するようになりました。(残念だけど、改札を通り抜けるときにそれなりに密着せざるを得ないので、臭いのはアウトでした。ごめんなさい。でももし浮浪者に何かサービスを提供できるなら、寝る場所とお風呂を提供したい。)ちゃんと臭いときでもできる限りは頑張りましたよ。そういう人ほど手助けは必要ですもん。

座っていて声をかけられたこともあります。そのままFacebookでつながった子もいますが、電車での出会いは、こちらもやや警戒するので、つながらなかったり、だいたい長くは続かなかったです。物乞いのお母さんを助ける子供がその母親に向けた笑顔のかわいらしさに胸打たれたこともあります。なぜか席を譲れられたことも多かった…。

怒られたこともあります。コートからお財布が見える状態で、居眠りして、前に座っていた人に説教されました。良い人だ!と感激しました。なんだかともかく振り返ると実にいろいろあったなぁ、と思います。

RER B line, Gif sur Yvetteの駅

居眠りして、車庫まで行ったこともあります。一人ぼっちで目覚めたときの、びっくりぽん。

車内の緊急ボタンを押しまくってRERの職員さんに救出してもらいました。「ごめんね、寝てた」と言ったら、目を吊り上げたお姉さんと目じりを下げたお姉さんが救出してくれました。

パリのメトロとRERは、あんまりきれいじゃないし、南京虫の温床らしいし、微妙なんだけど、窓からの風景は美しく、本当に不思議な不思議な温かい思い出がいっぱいできた乗り物です。

私は、フランスにいるときは、メトロとRERにいっぱいお世話になったので、この乗り物のことが、結局好きです。

人生びっくりぽんの乗り物です。

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