(理科)ザゼンソウ(滋賀県 高島市)

2021年は始まったばかりではありますが、今のところ私の2021年は、滋賀県高島市との出会いに尽きます。すれ違う地元の人々に、本当に親切に接していただきました。温かい市民性と、豊かな自然に、心ときめく場所だなぁ、とほっこりしています。

メタセコイヤの並木や竹生島、果実狩りやハイキングに最適な登山道など、いろいろあるようです。野外、ということで、ちょくちょく行くようになりました。

昨日、ザゼンソウを見てきました。

楽しかったのでご報告します。

サトイモ科だそうですが、花の後に育つ葉っぱ里芋っぽいですが、葉以外はあんまり里芋っぽくはないです。葉は漢方の材料でもあるそうです。

この花について一番私の注意を引いたことは、めしべが発熱すること。

極寒のなかでも20度ほどに発熱し、しかも一週間ほどその温度を維持できるそうです。

珍しい花があるらしいと、行ってみただけでしたが、地元の方がボランティアで案内などもしており、詳しい話を聞いて大変楽しい訪問となりました。訪れた方の中にもリピーターの方もいるようで、10年前に比べたら群生地は広くなった、どんどん広がっていると、ニコニコ教えてくれました。この群生地の周囲は竹林だったこともあり、あのように小さなサトイモ科の植物が、ただ人が踏まないように、と配慮されるだけで、他の植物を駆逐できるほどに強いのかと思うと、驚きを隠せません。それとも保護活動の一環で周囲の植物を抜いているのでしょうか…。ただ、別に有料の保護区でもありませんし、どのように世話や維持を行ってるのかはわかりませんでした。

「今年の花はあんまりきれいじゃないわねぇ」ということでしたが、初めて見た私は、思ったより可愛らしい花と、丁寧な解説や、きちんと保護されている様子に大満足でした。高島市で食事をすると、売り上げの何%だったか、ザゼンソウの保護に使われているそうです。

植物が熱を持つとはすごいことだと感心して、自分でも少し調べたところ、ハス(ハス科)なども発熱するそうですね。知りませんでした。ただしこちらは一過性で、20度前後を維持して一週間、という植物は非常に珍しいようです。花は0.03度の差を感知して調整しているそうで、これにもびっくり。敏感ですね。

植物の栄養素として代表的なものはK(カリウム)P(リン)N(窒素)ですが、ザゼンソウは動物と同じ解糖系(C 炭素)を使って発熱しています。めしべの部分には、ミトコンドリアの存在が多く確認されているそうです。解糖系のピルビン酸回路のところで働く酵素などにもバリエーションがあるそうです。

植物でありながら、動物が持つエネルギー生産系と植物が持つエネルギー生産系を二つともうまく活用している、発熱を可能にするだけでなく、その温度を維持している仕組みなのだそうです。

なるほど確かに恒温動物は、温度を維持する生体分子機構を持っています。植物の多くはそれを有しないので、普通は外気温と植物体温は同じなのだそうです。

そこまで調べて私ははっと気が付きました。

私たちの体は温度が下がると、生体機能は働けなくなります。代謝が止まり、やがては死に至ります。

ところが植物は、温度が低くても、生物としての生体機能を維持する仕組みを持っているのです。

植物はなんて優れているのでしょう!

私が訪れたのは暖かな日でしたが、雪の残る中で見たので、香りは良くわかりませんでした。が、虫媒花でハエが受粉するそうで、ラフレシア(ラフレシア科)同様臭いそうです。故に英名はskunk cabbage (スカンクのキャベツ)。

淡く発熱することでにおいを飛ばして虫を呼んでいるのかもしれない、と思いましたが、一般的には、寒い春先に虫に温かな環境を提供することで受粉している、と言われているそうです。

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