その気持ちに感謝
誉め言葉ってどんな言葉でも嬉しいもの。
私が一番心に残っている誉め言葉は、ある大きな大学近くのセブンイレブンのレジのお嬢さんからかけられた誉め言葉。
「日本語お上手ですね!」
もちろん、ちょっとびっくりしたんですよ。
「まぁ、ありがとう、おほほ」
よほど留学生の買い物客が多いのでしょうねぇ。「あらあら、母国語ですもの」という話なのでした。
しかし若い可愛らしいお嬢さんのはにかむような、そして勇気を出して声をかけてくださったことがありありと伝わる満面の笑顔に、まぁ、いいか、とおもったのでした。そんな頻繁に行く場所でもないお店ですし、ばれることもないわけです。
年齢的にも学生とは程遠く、200年くらいは日本に先祖がいたことも分かっている身としては、突っ込みどころも満載でしたが、不思議でならない、とは言いません。これがなぜか、これまでも故郷の外では頻繁にある出来事なので。日本って島国で、一応島ごとにそれなりに顔に傾倒があるんだなぁ、と思ったものです。
まだ20代の頃に、初めて行った東京の上野駅で、「山手線内回りに乗るにはどこへ行けばいいんですか」と通りすがりのおじさんに聞いて「あなた日本人ですか?」と返されたときは、[なんだこのおじさん(怪訝)]と思ったものですが、その後、外国に行くようになったら、空港や飛行機の中で、中国の方からは中国語で、韓国の方からは韓国語で、ベトナムの方からベトナム語で、というように、アジア圏であればどこの国の人にも見えたらしく、いろんな国の人から母国語で声をかけられたものです。
そして、日本人に英語でおずおず「ハロー」とか言われるのでした…。空港とかだと、ほぼ100%です。
母国語で声をかけてくれたアジア圏の人々も私が母国人でないとわかるとがっかりするのですけど、日本人の人も私が日本人とわかるとがっかりするので、私も実にがっかりでした。何故私の母国語は日本語なのかしら、ってものですよ。
外国の人が、私を同郷人と思って下さる時、それは確実に私に好意を持ってくださっています。みな自分の育った土地を愛している気持は必ずあるものですもの。
だからその気持ちをずっと嬉しく思っています。笑顔をありがとうございました。がっかりさせてごめんなさい。
その方の国の言葉を話せない自分を、哀しく思ったものです。
一方、日本人の人は、外国の方とお話したい人が多いと感じてはいるので、なぜあえてアジア人であることだけは確実な私に英語でわざわざ挨拶してくるのかは不明なものの、声をかけてくださること自体はいいのですけど、私が日本人とわかったとたんの落胆と無関心には、むしろこっちががっかりでした。
行動としては日本人の方が謎です。
母は笑って、化粧しないからよ、といったものですが、彼女も海外ではあまり日本人とは思われなかったみたいです。お化粧もするお洒落な自慢の母ですから、こうなると化粧は関係ないでしょう。
一回、30代の頃かしら。自身の外見というものに興味を持って、たまたまお隣に座っていたシンガポール人のお嬢さんに「あなたどこの国の人?」ときかれた時に、「当てて」と言ってみたことがあるのですけど、彼女には結局さっぱり分からなかった模様。中国語ができなかったので、よけいに謎が深まったようでした。
そうして考えれば、私、学生の頃に、中国語とかアジアの言語を専攻していれば、旅先でもっとお友達ができたのかしら。
思い出したら懐かしくなりました。
基本的には退屈な、狭いし、空気もフレッシュでない空の旅。なのになんでか楽しい空の旅。こういう思い出も、思い出したらニヤリと嬉しい思い出です。
今機内食は、お弁当として販売することで活路を見出し、このパンデミックを生き残ろうとしているそうです。売れてるそうですよ。そう、機内食は、やっぱり数少ない貴重な楽しみでした。
早くまた、皆が自由に国境を越えて旅ができるようになればいいですね。