睦月の月見
なんだか近頃、夜空や月のことに思いを馳せますので、今日はお月さまのことを書きたくなりました。
日本でお月さまをめでるのは15夜、神無月(10月)の満月の頃です。秋の豊作を神様に感謝して、中秋の名月に月見団子をお供えします。民俗学者の新谷尚紀先生によりますと、ところが古来は、その年の豊作を願って、睦月(1月)にもお月見がありました。
というわけで、あながち季節外れな話題ではないようです。
月見の話をいたしましょう。
とかなんとかこじつけておいてなんですが、月見の話は新谷先生にお任せしたく思います。https://www.leon.jp/peoples/9309
月といえば月見、月見といえば月見団子です!(花より団子、月より団子)
私が月見団子を覚えたのは「日本昔話」でです。お膳の上に並ぶ、満月のような、まん丸で真っ白なお団子。あれが月見団子なのだとずっと思っていました。
魔よけのススキを飾って、白い月に向かって高く積み上げられるそれを、丸くて柔らかそうできれいだなぁ、と思ってはいましたが、実は食べたことがありません。
私が和菓子好きになったのは京都に住むようになってからですが、あえて月見団子に注意を払ったことがありませんでした。ところが、和菓子屋さんをご親戚に持つお友達ができまして、その方にびっくりする話を聞きました。
京都の月見団子は、まん丸でもなければ、真っ白でもないそうです。
ちょっといびつな長方形に、あんこが足りなかったみたいに中途半端に、餡の衣をまとっています。
可愛くない!
と思ったのですが、理由が面白いんです。
お月さまのいびつな形は里芋がモデルだから、餡の衣は満月に架かる雲居
あえて満月に雲がかかったさまを、お団子に映すその心根、ちょっとアンニュイ。豊穣に感謝して白い米を丸めて作る関東の方が、素直な感じはありますが、その土地、文化を反映しているのかしら、と思うと、ひねりがあるところが、京都らしくもあり、愉快です。
それで、京都の月見団子は、わざわざ探しに行きました(秋にです)。
京都には和菓子の老舗がたくさんあります。どこも長い歴史があります。多くの和菓子屋さんは、歴史的に上菓子を主流とした、位の高い人々に愛された和菓子屋さんです。京都には特に上菓子屋仲間という組合が江戸時代に作られていて、ご家族の方が家を継がれることが多い背景から、現代もこの組合の関係が生きている、と言えます。地元の人と、あん談義をしたことがありますが、上菓子を作るお店と、そうでないお店の餡を一緒くたにして語ることは良くないと諭されたことがあるほどです。ガイドブックで紹介されている店の多くが、上菓子屋さんで、ウキウキ食べ歩きをした私に和菓子のおいしさを教えたのは、こうした上菓子屋さんたちなのですが、最近は明治に入ってからできた、普通の和菓子屋さんで良く和菓子を買うようになりました。月見団子を見つけたのもこうしたお店の一つです。(上菓子屋さんではお取り扱いのある店を見つけられませんでした。)
こうしたお店のコンセプトは、「家族」
出町柳の出町ふたばさんとかもそういうお店の一つだと思いますが、私のおすすめはこちら。
創意工夫と美味しさの両方を兼ね備えた「仙太郎」:https://www.sentaro.co.jp/shop/shoplist.html
大福や最中が有名です。余談ですが、彼の京都大学の松本前総長の退官記念パーティで、ご来賓の皆様に渡されたのが、仙太郎の最中だそうです。
月見団子も大変美味しゅうございました。
包装紙も非常に上品です。
(エコは大事ですが、)シンプルなのに美しいこの紙で包まれたお菓子を持って帰って、家のテーブルに置いたら、家族が笑顔になるだろうなぁ、と思える包み紙。
価格も手ごろで、餡も美味しければ、季節の和菓子の作成にも余念ない、立ち寄るだけでも楽しい和菓子屋さんです。
JR京都駅の伊勢丹にも入ってます。私はこちらに顔を出すことの方が多いです。
お団子は日持ちしないですし、贈答品には向かず、あえて贈り物にするほど特別というわけでもないけど、買うときに誰か一緒に食べる人がいればいいなぁ、と友達の顔や家族の顔が浮かぶ和菓子屋さんです。私の母より21年だけ年上の和菓子屋さんです。