(本)文明についての考察

新年あけましておめでとうございます。皆さんが思いっきり泣き笑う愛に満ちた2021年となりますことを祈念いたしております。コロナ渦とはいえ、心は自由に羽ばたきますように。

さて、川端康成氏がノーベル文学賞を受賞した後で発表したエッセイのタイトルは「美しい日本の私」、大江健三郎氏がノーベル文学賞を受賞して書いたエッセイが「あいまいな日本の私」

何も受賞していませんが、元旦にあたって、元旦らしいことを書きたいと思った私がつけるブログのタイトルを「(まだ)美しい地球の私」…にしようかと思いましたが、身の程知らずにやりすぎかしら、と思いまして、思いとどまりました。しかし…地球を世界とすると、さらにいかがわしい文筆家になったようなタイトルになるのはなぜでしょうかね。。。

結局、文明についての考察です。

人類が生み出した文明は緻密で美しいもの。大自然を見るのが好きです。遺跡を見るのが好きです。歴史書の中の英知に触れるとき、科学の中の発見に触れる時、飛び上がるような興奮を覚えます。都市を歩くことも好きです。友達と集まったり、スポーツをしたり、安全な環境で安心に生きていける文明に感謝しています。

人類が築いた文明は緻密で美しいもの。けれど文化の中にあるカーストや経済活動の中に具現化される欲望を憎みます。戦争を憎みます。環境汚染を憎みます。紛争の地に家族を残した知人に、知ったような口をきいて場をつなごうとする自分を憎みます。

文明と自然が調和の歌を奏でていたのは、人類の歴史の中で、どの時代まででしょうか。

殺合いは類人猿の時から有する本能ですから、戦争という観点でこれを語るのは難しいです。子殺しはメスの発情期を長くするためにオスが行ったそうですから、類人猿のこれは文明でしょうか。

しかし、前頭葉の発達とともに、人類が築き上げたのが文明であるはずです。

すると、文化の中に内包されるカースト制、権力志向、弱肉強食、贅沢嗜好などは、サルも持っているので(サルにも文化はありますが)、文明ではないでしょう。けれど、世の中には不名誉にも「野蛮」と称されてしまう「文化」はありますね。人食い人種は野蛮だが美しく高度な文化を持っていた、といいますが、では彼らが持っているのは文明ではないのか、というと、これまた文明のような気がします。「本能」は文明が発達する中で、「社会」を機能させるため利用されてきており、文明と切っても切り離せないものだと思うからです。

けれど文明が美しいのは、それが限りなく「本能」から遠いものだからではないのか。

美しい文明に中にも、戦争や阿鼻叫喚やカオスがあって、それも全部ひっくるめて文明なら、文明は美しくなくないかしら…。ただ、人類の一人として、今日の日の私を支える文明を美しいと感じるだけなのでしょうか。

*

旅をすると、見つけるものは一人一人の人生です。

触れ合わなくても、話さなくても、垣間見えるものがあります。どんなに寂しい心で生きていても、社会にいるだけで、私もあなたも、人生を誰かと分かち合っているわけです。こうしてみている世界が文明なら、文明が美しいのは、涙と血を流しながら精いっぱい築き上げているものだから、なのかもしれません。

英語なら、civilization(文明)は社会形成で、culture(文化)は耕していくもの、となります。文化的営みは「想像力」と「創造力」、「考察」と「推察」、そして「理性」と「本能」によるものかもしれません。10年後、20年後を憂いて、現在の行動様式を変えることができるのは、人類の能力の一つとして挙がっています。

80歳の私が旅をできる国は、文化的生活が営まれているだけではなく、文明との接点がある国だけです。そしてこの世の中に、訪れることが決してできない文化がたくさんあればよいと思います。地球の、ではないかもしれないけれど、人類の宝物です。

旅と詩を通して、小さな幸せを運ぶTrobairitzトロバイリッツでありたいなぁ、と思う2021年の元旦でした。

世界は美しい、と信じる人が増えるような、人類がずっと感じ続けることができるような、素敵な年月を見届けたいです。

少しばかり私には早すぎる議題でした。文化と文明。今後も時折考えてみたいと思います。

追記

「美しい日本の私」も「あいまいな日本の私」も時代に左右されない名著です。エッセイを読んで彼らの思考、視点、展望に、このような識者がいるなら、私たちの未来は大丈夫、と高校生のお嬢さんがつぶやいていました。もし新年に何か読書を、と思い立ったら、ぜひお手に取ってみてくださいませ。

(本)文明についての考察” に対して2件のコメントがあります。

  1. サンテン より:

    このブログに出会い、今年という一年を、発見、驚きと感動とともに始められたこと、大変ありがたく感じております。

    どうぞ、末永く素晴らしい文章を綴り続けてくださいませ。

    1. trobairitz より:

      サンテン様、ありがとうございます。つたない文章ですが、読んでいただけてうれしいです。
      2021年が、サンテン様にとって素晴らしい一年になりますように!

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