歓迎してくれるのは…
旅の途中で、人間の誰にも会わず、誰とも話さず、サクサクにしろ、トボトボにしろ、歩いていて、ふと、「あ、私、今歓迎されているかも」と感じることが時々ありませんか。場所から受ける歓迎というやつです。
気持ちよい風が吹いた時、小さな発見をした時、そして動物と見つめ合った時などに。
その典型的な歓迎の例が私には一つあります。
小鳥さんの歓迎です。
小鳥さんは、普段は人前に姿をあまり現わさないので余計にそう感じるのです。
移動で疲れて、最終目的の町の駅から地図を確認しながら、ガラガラとスーツケースを引きずりつつ、とぼとぼ歩いているときに、さっと舞い降りてきて、普段ならあり得ない近くで(といっても50cmとか1mなどは離れています)、しばらく高らかに歌ったりしてくれる時なんか、旅の疲れが吹き飛びます。
礼儀正しく、5分でも10分でも、そっと佇んで歌を拝聴させていただきます。
到着したその日に受ける歓迎は忘れがたいものです。これまでに、何回かそういうことがあり、「ありがとう、来てよかった」と思ったものでした。
行く機会も少ない、住むこともないであろう、一期一会の町や国。
歓迎を受けた場所は忘れてしまったりもするのですけれど、なぜかその印象は深く心に残り、どの土地だったか覚えていない、その忘れてしまった国や町に、澄んだ小鳥の歌声を同じイメージを抱き続けているように思うのです。