(ハーブ)ショウガ湯とwedang jahe

ショウガの話
Zingiber officinale
Zingiberはサンスクリット語の角と根という言葉の合体 officinaleは薬用の、という意味。ショウガ湯は体を温めるために飲みますが、薬効としては健胃や矯味剤。
薬効成分と知られるのは、辛み成分のジンゲロール。ジンゲロールは加熱や貯蔵で、ショウガオールやジンゲロンという二次産物になります。
ショウガオールは解熱、鎮痛、鎮咳作用が強く、ジンゲロンでは健胃作用が強いことが知られる。

世界共通の飲み物は、といわれると、何を思い浮かべますか。

水をのぞけば、コーヒー、紅茶…。発祥の地があって、交易や戦争を通じて各国に伝わったものが多いです。ハーブの面白いところは、ある土地で生まれて利用されてきた植物が、全世界で同じ利用法でバラバラに考案され利用されているところ。つまりその土地の文化だけでなく、人の営みそのものを表しているところです。

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季節があちこちに飛んでいる気がしないでもないですが、今日は、私のしょうがの経験を話してみたくなりました。

最近プランタで育てたショウガ

新ショウガがスーパーで出てますね。ショウガの収穫は10月なのに不思議です。いちごもショウガも、旬の時期は安く、その他の時期はやや高めに、いつでも手に入るというのはすごいこと。宇治はそれでも、季節でだいぶんスーパーの彩りが変わったので、郷里から出てきたばかりのころは、いつもなんでもあった福岡の大型スーパーとは違うなぁと思ったものでした。

さて、私世代の人は知らない人はいないと思いますけれど、少女のバイブル「赤毛のアン」をご存知でしょうか。私たち世代はきっとみんな村岡花子さんの訳で読んでいますね。この有名な作品を書いたモンゴメリ氏の作品の中に、ストーリーガールシリーズがあります。農場で育つ子供たちのお話ですが、赤毛のアンよりもっとモンゴメリ氏の自伝に近いといわれていて、辛いことも理不尽なことも含めて、子供たちの優しい哲学と生活を書いている本です。

そのストーリーガールで頻繁に出てくる飲み物があります。ショウガ湯です。

雰囲気では、砂糖とショウガをお湯で煮た飲み物、という印象。子供たちが雨にぬれたり、風邪をひくと、必ず登場し、その辛さに子供たちがぶつぶつ愚痴をこぼすシーン。私の母はハイカラで料理上手でしたので、戦後洋食家庭料理を多く作ってくれ、紅茶などは家にあったのですが、ショウガ湯を作ったりするような人ではなかったので、私がショウガ湯を初めて飲んだのは、30歳近くになってからでした。それもスーパーのインスタントでしたので、濃厚な甘さにびっくり、冬にはおやつの代わりに飲んだりしていました。とはいえ、家で作るとやっぱりさっぱりできます。日本のショウガ湯は葛湯の一つですね。モンゴメリ氏のショウガ湯とは違うかもな、と思っていました。

ところが、その頃、インドネシアの伝統ハーブ「ジャムゥ」について知る機会がありました。ジャムゥは国や島の文化というよりは家庭文化で、家によってレシピは違う、というのが一般的認識で、全土の家庭にあって、昔は民間医療の一環でもあったそう。インドネシアもバンドンなんかは、年中25度の快適地域でどこもかしこも暑いわけではなく、列島諸国でもあるので、各島の文化は本当に多様で、それぞれがそれぞれの島の出身であることを本当に誇りに思っていますが、皆がそれぞれに家庭の味として、和気あいあいと盛り上がる食文化の一つでした。

そのレシピをもらって、感じ入ったことを覚えています。ショウガ湯もまた、全世界共通の飲み物だと思って。

インドネシアのハーブティーは、全土でターメリックとショウガを使ったものが多いです。世界的な産地としてはインドが有名なショウガですが、両方とも熱帯植物なのでインドネシアも立派に産地です。日本のショウガ産地は高知県、モンゴメリ氏のいた時代のカナダは輸入でしょう。最近、フランスでショウガの生産を試みる農家の話を聞きました。南フランスは暖かいから可能みたいです。ジンジャーエールは、アメリカやアイルランドが発祥で、ショウガはヨーロッパでは輸入食品であったにもかかわらず、全世界で重用されてきた重要なハーブです。まぁ、炭酸水でなく、お湯を使えばこれもショウガ湯。ジンジャーエールも、各家庭の主婦が家族のために作ったショウガ湯が発祥でしょう。

で、話をジャムゥに戻すと、インドネシアにもショウガ湯があります。家庭で一般的に作られるショウガ湯です。やはり風邪や寒いときに飲むそうです。

(Wedang Jahe)
インドネシア ショウガ湯 ープトゥさんのレシピー  (緑色の部分はミオさんの個人的成功分量)

ショウガ(gingiber officinale) 2欠け (30gくらい)
シナモン 一本(7cm)         (4本)
レモングラス(Cymbopogon citratus) 1本 (大匙2)
ブラウンココナッツシュガー(キビ砂糖で代用) 適宜
はちみつ                  適宜
水                                   グラス2杯 (2L)

1. ショウガを洗ってすりおろす。2.レモングラス、シナモン、砂糖、水をいれて15分沸騰させる 3.グラスにうつし、はちみつを落とす。
冷やして飲んでも熱いまま飲んでも良い。

日本のショウガは中国からといわれています。インドネシアのショウガは、日本のショウガよりやや小ぶりで辛いです。ショウガ湯は、知る限り、中国にもインドにもインドネシアベトナムにもシンガポールにもアメリカにもカナダにもフランスにもスペインにもありました。日本では葛を入ることが多く、インドネシアではレモングラスなどそれなりの傾向はあるものの、そのどれもが、家庭の味。

昔からの人々の交流や交易も反映されていると思いますが、面白いです。

ジャムゥについて教えてくれたのは、仕事でジャムゥに関わっていた男性の方で、実際にレシピをくれたのは女性の方でした。誰にとっても身近なものみたいでした。インドネシアでも今は、家庭で手作りすることは少ないそうで、スーパーでインスタントを買ったり、売り歩いているお嬢さんから、あるいはカフェで注文するんだそう。

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