緊急事態宣言下の世界

通り過ぎるバイク、車、スーパーの中の音楽、電車の踏切音。

それが、肩をすくめるほど大きな音であることを長い間知らなかった気がする。

道を歩いていて、人間とすれ違う時、気になるほどの大きな音がすると思う。

電話をかけていたら先方に絶対聞こえる。

誰かに街中にいることを知られたくなぁ、と思って外を歩くようになって気が付いたことだ。

一人で暮らす僕が、誰かがいるときに、周囲に満ちる音の数々。

昼の街の音。

朝の街も昼の街よりは静かだ。街を歩くときは、仕事に行く朝か日が沈んでからが多かったので気が付かなかった。忘れていたのかもしれない。

そしてひどく不思議なことに気が付いた。

街中でも緑がある。生き物と出会うときもある。

歩きながら鳥の鳴き声が聞こえる。亀がいる。鯉がいる。猫がいる。犬がいる。

その時運ばれるのは静けさだ。

高らかに鳥が歌うとき、空間は鳥に声で満ちる。

ミャーミャーこちらを見ながら猫が鳴き、カラスがふわりと舞い降りる。

通りすがりの犬によけられたり、においをかがれたり。

日向ぼっこをしていたり、4つの肢を割と一生懸命動かして水路を泳ぐ亀。

大体じっとしているけれど、時々優雅に体を揺らして泳ぐ大きなフナ。

光を反射して、きらきら泳ぐ小魚。

静かなわけではないはずなのに、時が止まり、私と彼らだけになる。

静けさを運ぶ動物と、音を運ぶ人

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