(空想)思春期の難しい会話
思春期は難しい
カエル姫は時々寂しい。きれいな模様の衣をきて、夜空を見上げて歌ってみたりする。
カエル姫は揺れる草や土の香りを嗅ぎながら、生まれでた沼の世界の辛さを思った。最初は兄弟がたくさんいた気がしたが、気が付いたら一人ぼっちでここにいる
カエル姫は少し泣いた
そして少し眠る。目覚めたら、小さなコバエが目の前をあわてて飛び去って行く。少しおなかがすいた気もしたけれど、コバエはこの間恋人を作ったばかりだから見逃してやる。
あんなふぅに慌てふためいて逃げることないのに…。
沼の傍のアヤメの花影からワイワイにぎやかな声が聞こえた
アリたちが行列を作るか相談中だ。
仲間と一緒に餌を集めに行くんだろう。とても楽しそうに見える
いいわねあんたたちは、お父さんとお母さんがいつも一緒で、子供ころから餌をもらって、大事に乳母に育ててもらっているんでしょう。
カエルは声をかけた。強そうだけど愛嬌ある顔のアリたちは普通カエルに見向きもしない。だけど今日は一匹が振り向いた
つぶらな瞳のアリ嬢だ。何か見つかったところなのか、食べ物のサンプルを調べている
カエルは草を踏みながら続けた
私は生まれた時から独りぼっちよ。親の顔なんてみたことないの。肉食の昆虫が水を泳いでるし、本当に大変だった
アリ嬢は小首をかしげる
あら、でも私、泳げないわ。水でも陸でも暮らせるなんて。あなたすばらしいわね。
それは、もちろん能力ってやつよ、苦労とは違う
上の方を蜂が飛んでいく
空が飛べるのもいいわね
せっせと食べ物を調べながらアリがつぶやく。人間がこぼしたお菓子のかけらは、行列を作って取りに行く価値がありそう。沼の先の遠い公園で見つかったらしい。今日は忙しくなるだろう
アリのつぶやきを聞いてカエルはフンっと鼻を鳴らす
ない物ねだりねぇ、まぁ、あなたみたいに真っ黒で小さい生き物なら、土の中で十分よ、安全でしょ
あら、カエルさん、今日は意地悪ね
カエルは少しバツが悪くなる
だってあなた苦労知らずなんだもの、私が少し苦労を教えてあげないと、将来困るわよ
慌てて笑顔を繕って言うカエルをアリはちらっと見る
(あ、私っていやな奴!)カエルは内心慌てる
アリは笑顔でカエルに手を振る。そうね、私は大家族で幸せ。そろそろいかなくちゃ、またね
(今あなたと出会って話していることが私の苦労だわ)アリ嬢はため息をついた
アリはベェーと顎をカタカタした
公園からお菓子を全部運ぶには一日中歩き通しになりそうだ。姉妹が待っている。カエル姫が苦労していることはアリ嬢は知っているが、ぶらぶらしているカエル姫がアリはうらやましい