貝守り

小さな泡が水の中ではじける。

深い深い青の底。蒼い、碧い水の底

鮮やかなサンゴに、ゆらゆら揺れるイソギンチャク。砂の中にひっそりと沈む深海魚。

海の底にはすべすべした小さい貝がたくさん落ちている。形は様々、巻貝もあれば平貝もある。色とりどりの貝殻だ。

そういう貝は力強いお守りになる。

小さい子よ、もし浜辺で貝を見つけたら、それを拾って大切にするとよい。貝は夢を運ぶだろう。

キラリと光る石のかけら。それは崩れた貝殻の破片。石灰が沈着し、いつしか化石となったもの。

地上の夢は、高く空へ上り、星になる。

けれどいつしか星は落ち、海の中で貝に変わる。

耐えがたく長い孤独の果てに、遂に石になる。

物言わぬ、静かな欠片、長い長い時の後、夢を生んだ彼の人はすでに亡く。

時間とともに形さえ失い、崩れ落ちる。

砂となった化石は集団で一つ、一つで集団。

流れに舞い上がり、ふわりふわりと水面へ舞い上がる。

キラリきらりと反射する。

西の空にオーロラが出た晩は、海の底で貝が化石に変わった晩。幾千、幾万もの夢のかけらが、石になり砂になり崩れる晩に、空を舞う光の舞姫。

それは、海の底で待ち続けて、会えなかった人の面影を想う、石のかけらを慰める星々の取り計らいということだ。

小さい子よ、だから浜辺で貝を見つけたら、拾って大切にするとよい。それは君のものだから。

それは一度は海に落ちた夢が、形を変えて還ってきた姿だ。孤独で独りぼっちだと感じるとき、そっと守ってくれるだろう。

貝は長い孤独を耐え抜き、夢を運ぶ。それは力ある夢だ。