冬の満月
まるで水晶球の中にいるようだ
見上げた空に満月が光り、そらを撫でるように雲が流れ
地球を、まあるく大気の層が包んでる
垂直に高く両手を伸ばしたら、水晶球の最初の薄膜に今にも届きそうだと思う
揺蕩うように、たなびくように、地球を包む まるく膜 光と粒子でできた膜
水平に両手を広げて、眼前にひろがる空気を抱きしめる
何も抱きしめたものはないはずなのに、シャボン玉のような空気をぶわーんと押した気がする
くるくる、ぷかん
ぷかぷか、くるん
水晶球の上から僕らを見ている誰かがいるかも
その誰かから、建物の中に隠れれば、僕は見えなくなるのだろうか
神様の視線が粒子なら、森の奥まで、コンクリートの奥までは見通せるけれど、鉛版の向こうや、海底なんかは見えにくいのかもしれない
光粒子、大気粒子、水粒子
電子、原始、中性子
波となり、うねりとなり、ざわざわと自在にどこへでも流れていく
やさしい層が、その外側のあらゆる荒ぶるものから、地上を抱くように守っている
その姿は、雲となって現れ、風となってめぐる
燃え続ける体から漏れ出た白い吐息を迎えるように 雲がたなびき 風が吹く
地の上にある二つの星は空を向き、
冷たい空気のそこここで、空にある星がこたえる
そのまたたきに 耳を澄ます
ふわふわ、くるん
くるくる、ぷかん
ぷかぷか、くるん
これは笑い声ではないだろうか
冬の満月 中空に光を放つ
あぁ粒子が笑っている