Jacqueline嬢のお茶会
これままで一番お洒落なお茶会の一つに、ジャクリーン嬢の家で、女性3人でしたお茶会があります。朝のお茶会です。
朝ご飯を食べて、お昼ご飯の前に、こっそり。
そのとき泊めていただいていたお宅で「主人も出かけたし、どこかへ散歩へ行く時間があるわね。」とつぶやいた奥様が、名案!とばかりに「私の親友を紹介するわ」と連れて行ってくれた家がジャクリーン嬢の家です。
私が35の時に、今の私と同じお年だったジャクリーン嬢。あれから45年もたったのですね。
傘寿とは思えぬほどに、背筋をシャンと伸ばし、足取りもしっかり、英語も流ちょうに話す老婦人でした。貴婦人という言葉がぴったりの凛とした女性。
突然やってきた私たちを優しい笑顔で迎えてくれました。
美しく飾られた、とても手入れの行き届いた可愛らしいスイスのお宅で、暖炉には香りがする香木や、植物、それに食べたオレンジの皮を乾燥させたものをくべていらっしゃいました。良い香りがするそうです。
朝ご飯は食べたばかりだけど、こっそりね、と3人で目くばせしあって、ジャクリーヌ嬢手作りのお菓子をいただきました。古い伝統の家庭菓子だそう。語りあう弾むような声を聞きながら、温かさに満ちた二人の女性の笑顔に包まれたお茶会でした。45年も前の事なので、見つけるのは大変とは思うのですが、レシピを聞いてどこかに書き残したような記憶が…。大変美味しいお菓子だったんですよ。
家でお茶をするときは、ついついお茶もたくさん飲んで、お菓子も食べ過ぎてしまいますが、友人と3人で宝物のような手作りお菓子をつまむのは、一杯のコーヒーと数切れのお菓子で(あまりに美味しくて実は勧められるままに一杯食べたのですけれど)、心も体も満ち足ります。これぞ、本物のお茶会です。
語学力と記憶力が正確なら、という前提はつきますが、彼女は画家で、ロザンヌの市議をしていたこともあるそうです。
帰る前にご自身の画集を一冊くれました。水彩の優しいタッチでロザンヌの自然が描かれた画集でした。
これは大事にとっています。
最近は、手作りのものより購入したものを差し上げる方が喜ばれるのですけれど、真心を込めて手作りすることの尊さを思い出します。
自分が作ったものは、そうやって差し上げて喜んでもらうにはまだまだ未熟な腕前なのかもしれません。でも、今の自分がなりたいと思う存在を、思い出させてくれる古い記憶の一つです。