幼稚園の用務員さん

今日は、もう会わなくなって久しい、とあるお知り合いの方のお話。

その方は、ときどき幼稚園の前を通る道を通って仕事に行っていた時期がありました。

朝の8時くらいのお話。初冬のある朝、きっと用務員の方だと思いますが、幼稚園の入り口にかかっている、お星様やかわいいキャラクターに取り囲まれたピンク色の丸い架け時計を熱心に拭いている方がいました。

おじさんは、もちろん美男子でもなんでもないパッとしないおじさん。服装からきっと用務員の方。

でも、キキとララだったかメロディーちゃんだったか、その可愛らしいけど古くなっている時計を、布で熱心にこする姿に、その方の生き様がにじみ出ているように感じました。

大笑いすることが時々あれば上等な、何でもない人生を、愚直に静かに熱心に生きている姿だと思いました。

おじさんには似合わない明るいピンク色の時計を、これからやってくる小さな子供たちを胸に拭いているのでしょう。お話しする子は多くはないかもしれない、でもきっとかけがえない平安をくれる子供たちを思いながら。

知らない人からあいさつされて嬉しかった幼い頃。
ら、ら、ら
知らない人からあいさつされるのが苦手だった、新しい町、就職の頃。
ら、ら、ら
台所のコンロが一つ増えたの。南側の窓から見える景色と光が素敵なの。毎朝前を歩く学校の前をそそくさと通り過ぎるとき、先生たちはいつも挨拶してくれる。
え、へ、へ
知らない人を枠に入れて、枠の中の人とあいさつを交わしてた中年の私。
ら、ら、ら
誰かとお話しできると、それだけでとっても幸せな老いた私。
ら、ら、ら
知らない人にとっては私も知らない人なの。いつか知ってる人になることもあるかもしれないけれど、多分ずっと知らない人のまま。でもなんだか慕わしい。

毎朝あの角で見かけるあなた、電車でみかける貴方、そっぽ向いてしまったあなた。
あなた方の毎朝の背景の一部である私
たったそれだけのこと。
でもなんだか、不思議なの
ふ、ふ、ふ

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