梅雨
昔から雨は気にならない。
夏から秋を北欧で過ごしてからは余計にそうなった。
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美しかった夏の日の後に訪れた秋の雨を憂鬱という人はたくさんいたけれど、雨に濡れる植物からはいつでも小さな笑い声が聞こえるようだと思った。(豪雨の中でうなだれていることもあるけれど)
つかの間の雨上がりに、北国の薄く澄んだ光が空に広がる様子を見てため息をついた(雲を縫う光粒子の自由な舞い)
打たれる枯れ葉、沈む木々、森の奥深く、顔をのぞかせるキノコたち。(すべてなんだかひっそりと)
そして夏の名残の晴れの日に張り切って森に行ってキノコを摘む人々の明るい顔(心にほんのり灯をともす)
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知っていた人はみんなレインコートを着込んで、雨をものともせず出かけていった。
仕方がない?そうかもしれない。
でも仕方がないなら、嫌うより好きになった方がお得。自然をとても愛している。
だって。
人はいつも遅すぎる。自らの愚かさを知ることも、自らの甘えを知ることも。
人間は自然。
それは真実。
もっとうまくやっていければいいのに。そう思いながら、人は世界に愛されていると信じてる。
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私も、彼らと同じように、雨に打たれながら自転車をこいだ。記憶の中の土の香り。コンクリートの香りもした。古木の枝から香り立つ匂いも、水も匂いも。5感は多くを受け取った。
職場につけばレインコートを脱いだ。職場は近代的でとても快適で、レインコートを脱いでしまえば濡れたことは気にならない。
いつものようにあなた方がいた、あの日々。
雨の日に出かけることも、雨に打たれることも、気にならなかった。
あの日々。
あの日々は楽しかったんだろう。
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水に溶けだす化学物質の話を聞くけれど、私たち、この地球上で生きている。(みんな知っていることだ)
災害を起こす、その雨を産む空の下にある大地の世界で生きている。(みんな受け入れていることだ)
時に嘆き、苦しみに怒りの声を上げ、それでも共に歌って生きていこう。今の喜びを見つめていこう。(みんな願っているのではないか)
それが本当はどんなものでも、それが未来に何を運んでも、よりよい明日を信じて、今日の喜びを手放さない。(みんな願っているだろう)
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雨の日はそういう気持ちを思い出す。