(bar)アイルランドシチュー(ダブリン 京都三条)
今日は友人の語りをそのまま。
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レシピ アイルランドシチュー
玉ねぎ 1,2個
ジャガイモ 2.3個
豚肉のバラブロック 好きなだけ
塩、コショウ
1.玉ねぎをスライスし、鍋に敷き詰める。
2.豚肉をぶつ切りし、塩コショウを軽く振る。
このまま玉ねぎの上に、敷き詰める。
3.ジャガイモを適当な大きさに乱切りし、豚肉の上に敷き詰める。好みによるがジャガイモはやや多めが良い。
4.材料がちょうど浸るくらい鍋に水を入れて、強火にかける。
5.灰汁が浮いてきたら取り除く。
6.灰汁が出なくなってきたら弱火にし、その後2時間煮込む。
7.塩と胡椒で味を調え、出来上がり
京都に住んでしばらくたつ。何人かの日本人や海外の人に聞いてみたことがあるが、アイルランドシチューを知っている人にはまだ出会ったことがない。
突然なんのことか、を思われるかもしれないが、今日はミオさんに思い出の料理を紹介してほしいといわれた。なので、アイルランドシチューを紹介したいと思う。
アイルランドシチューは私の引っ越し料理だ。
私の引っ越しは新居でこの料理を食べてようやく完了するのだ。
料理を知っている人に出会ったことがないといったが、アイルランドシチューはアイルランドの店に行くとメニューに載っている。
例えば、京都の三条にはDublinという、金曜日の20時過ぎからアイルランドミュージックの生演奏が聴けるパブがある。https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260202/26016558/
ちゃんとアイルランドシチューがメニューにある。
ここは私が初めて見つけたアイルランドシチューを取り扱う店なのだが、張り切って注文したアイルランドシチューは、笑ってしまったくらい量が少なかった、のを、実は今でも覚えている(ご愛敬だ)。スプーン何サジ分…?
ここの’フィッシュアンドチップス’はびっくりするくらい量が多く、’唐揚げ’も盛りだくさんだ。価格も安い。なので、100円くらいしか値段は変わらないアイルランドシチューの量には多少意表を突かれたが、エールも美味しく、音楽も愉快な、素敵なパブである。これは間違いない。
腹いっぱい食べたいときは、揚げ物を注文することが肝要である、というだけだ。
胡椒が効いたシチューで、家で作るのとはまた違う大人の味だった。人参も入っていて、材料は3つと思っていた私は、やや意表を突かれたのも覚えている。アイルランドという美しく、寒く、でも貧しい国の伝統料理。寒い国でも食材を新鮮に保つのは冬以外は難しいという。もしかしたら現地では、胡椒が効いたこういうシチューを食べているのかもしれない。
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1970-80年代というのは、外国で働く日本人がだんだん増えてきたころだ。
その頃、父親の仕事でアメリカ南部、ノースキャロライナ州にしばらく住んだ。
引っ越しの晩、小さな子供たちと、たくさんの荷物と、大忙しだった母親は当然買い物に行く暇もなく、その晩遅く、とはいえおそらく大人にとってはそんなに遅くない時間、子供にとってはいつもよりずっと遅い時間に作ってくれた夕食がアイルランドシチュー。
母の優しい笑顔と、陽気な父と、3人の兄弟と、ひどくあたたかな思い出として胸に残っている。
こんなことをしつこく覚えていて、一人で暮らすようになって引っ越しをすると、必ずこれを作った。
作り方はとても簡単。
玉ねぎを鍋の下に敷き詰め、次に塩コショウを軽くした豚のバラ肉を入れて、最後にじゃがいもを入れる。
それから、材料が全部浸るだけ水を入れて、まずは強火で、その後は弱火で2時間程度煮込むだけだ。分量は特に決まっていないが、それぞれが大体同じ高さになるように、というのが目安だそうだ。
純日本の家族だが、祖母がやたらハイカラで幼少時から洋食に親しんだ母が作る料理は、和食も洋食もとても美味しかった。ひいき目なく彼女は料理上手で、その母の料理を再現するのは実はかなり難しい。
でもアイルランドシチューは問題ない。
材料は3つだけで、分量のレシピもなく、味付けは塩と胡椒だけ。でもちゃんと美味しくできて、いつもあの引っ越しの晩を思い出す。
子供に決して不安にさせなかった厳しくも朗らかな父と母、無邪気に守られていた私たち兄弟を。