星読みの友人
はるか昔に、私が南半球を旅していた頃、一人の星読みと友人になった
そのころ彼女はまだ少女と言っても良い年ごろで、南十字星を指さして教えてくれた
それからずっと、遠い彼の地で夜遅く図書館から出るときは、南に輝く十字の星を見つけるのが日課になった
星は私の勉学を見守ってくれているかのようだった。友のように
星読みの友人は褐色の肌をした、異国の少女
やがて一流の星読みとなった彼女は、宇宙を一心に見つめて海原を超え、世界各地で知恵を集めた
人々は彼女を招き、その話を聞きたがった
野心に燃えていた頃もあったけれど、彼女の性別と褐色の肌が、希望に満ちていた瞳に苦渋の影を落とし、やがて漆黒の瞳の奥には怒りが潜むようになる
時間が怒りを洗い、やがて悲しみに変え、その瞳は深い英知をたたえていく
私はそれをそっと見てきた
嫉妬深い恋人がいたころもあった
彼女が彼と紡ぐ幸せを聞き、彼女が彼に絶望するときを見つめた
私もまた一人旅をしながら、様々な軌跡を描き、すでに会えなくなった友と出会い、決意して会わなくなった友もいる
しかし気が向けばいつでも彼女の家の戸を叩く
彼女いぶかしげな顔で戸を開けて、私に気が付くと笑顔になる
錆びたカップにお茶を入れて向かい合って座り、緑に満ちた家の客間で、星々の話を聞く
彼女の考え聞き、私の考えを話す
常に同じ時を過ごすわけではないけれど、我々は友として、この時代を共に生き、この時代をともに見つめている
星読みの友人
君の悲哀も憤りも、私にとっては愛おしい友の一部分だ
君の賢さを認めない人はいない
そのことを君だけが知らずにいることが、私には不思議でならない