(空想)優秀な兄弟

君のテストの点がよくたって、君が大人の言うことをよく聞く良ゐ子だとしたって、何も絶望することはない。
大きな町の小さな家に生まれた3人の兄弟の話をしよう

上の子は、おとなしくて社交的で要領がよくてテストも山をあてて乗り越えちゃうような子だった。 
ーテストの点はふつうさ

中の子は、気が強くて、泣きまね上手で、なのに容量は悪くて、忘れやすいのに記憶力がいい子。
ーテストの点は良かったよ

末っ子は、優しくて、覚えるのは嫌いで、でも数学の公式をテスト中にゼロから編み出すことができた。
ーテストの点は悪かったね

頭がいいと近所で評判の3兄弟だ


遊ぶことが大好きだった末っ子は、持ち前の優しさから人には根気よく、ゼロの中にある真理を見る目で、両腕いっぱいの愛をそっと育てる、落ち着いた大人になった。

友達の多かった上の子は、静かで穏やかな暮らしを夢見ながら、勘と胆略で理不尽を乗り越え、社会の荒波をかいかぐり、若白髪増やしながらも大きな財を築いていった。



では賢く決まりを守ると評判だった中の子は?

褒められればうれしかったが自分のもののように感じるものがなかったので、レールの上を素直に歩き、あるべき姿で移り変わる世界を、なんとなく遠巻きに眺めていたのさ。
記憶力は年とともに失い、目も悪くなった。一緒に遊んでいた友人たちは、それぞれの家路につき、気が付いたら一人だけ砂場にいた。立派な砂の山を作ることができるよ、といっても聞いている人はいない。声をかければ話してくれるが、一緒に遊んではくれない。
独りぼっちになった中の子は、ある時立ち上がり、砂場を離れて好きなように歩き始める。砂場を出てはいけないと言われたことはないし、どこへ歩いていいかわからない。道は見えなかったが、道を歩く必要なんてないだろう。ともかくどこかへ
日が昇れば美しく思い、風が吹けばさわやかだった。ともかくどこかへ

たくさんの日の出と日の入りを見ながら、ゆっくりと、まずは見ることを学び、それから聞くことを学んだ。
世界のたくさんのものをみて、いろいろな人と出会い、ついにちゃんと砂場の外に友達を見つける
君と出会えてよかった、にっこり笑って、そして疲れてばったりと倒れ、まあるくなって眠った。

上の子がそっと様子を覗く。下の子がそっと毛布を掛けていく。

見てきた美しい風景と美しくない風景が泡のように浮かんではじける
誰もいない砂場が見えた
中の子は微笑んだ

あぁ、お父様とお母さまはどこだろう。
僕は今幸せです

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