迷宮

小さなおばば 迷宮の中にいる

思うより深いけれど 恐れるより浅い

助言は あるようで 見落としがち

標識は 丸いようで 四角い

簡単に考えるべきか 複雑に考えるべきか わりきるべきか

賢いはずのおばば 途方に暮れる

ばかだなぁ 白い羽を広げた ハトがつぶやいた

思い切った先が 行き止まりなら 引き返せばいいじゃないか

思い切った先が 崖だったなら さらに結構

引き返すか 飛び降りるか 選択肢が増えるだろ

出口にも 入口にも 着かないなら 歩けばいい

少し休んでみてもいいんじゃないかい 好きなときに急げるだろう 

ほら なんて自由なんだろう

行きたい先があるのなら そこを目指して行けばいいし

行きたい先がないのなら 道端の花や 空の青さを 見上げてごらん

落ちてたのがごみでも それはそれでもいいんじゃないか どうせ何も持ってない

深呼吸 喜び 悲しみ 寂しさ 怒りでさえも 今しかないもの

入ってしまった 迷宮が いつか 何かを 運んでくるかもしれないさ

(運んでこないかもしれないけれど 希望がなくなるわけじゃない)

怪獣が来てしまったら 炎と爪には気を付けて 

逃げるときは できれば 出口を見失わぬように

挑むときは できれば 出口を見つけてから

それから ちゃんと姿は確かめて 怪獣じゃないかもしれないから 

影におびえて惑うのは 結構疲れるものだから 疲れたら 昼寝も忘れずに

そして夢の中でいいからさ 時々 考えて欲しいんだ 

迷宮はなぜそこにあるのか 救い出したい何があったか どうしてそこにいるのか 

道は 長いようで すぎれば短い  

迷宮の 外はひろい

おばば やっぱり 途方に暮れてしまうだろ

皴しわの手を握り締めて 大粒の涙をこぼしてほしくないんだ

僕らを 見つけて ほしいんだ

早い方がいいけれど 遅すぎることはない

ぐるぐるでも ひろびろでも

一緒にいれば 輝くからさ

*

ねぇ みあげれば 今だって僕はここにいる

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