(cafe)市川屋珈琲 (京都 五条)

お代わり230円、違うコーヒーをお代わりできる

第3波を迎えたわが国では、緊急事態宣言を政府が検討中です。感染を防ぐために必要なこと、他者との交流を控えること、そういうことを微生物学を学んだものとして、侮るつもりはありません。また、自分でない誰かに迷惑をかけないように心がけるその心意気を持つ人々にも、心からの表敬を。ただ今回は、第一波よりも第2波よりも、なんだか声高に正義を振りかざす雰囲気があって、そのことで孤独になりすぎたり、自身の可能性を狭めたり羽ばたいている翼を傷つけたりする人がいないといいなぁ、と感じているところです。

生きることをかっこよく、息を吸って吐くだけ、と気取って書いてみたりはするけれど、それだけではないことは、私たちはみんな、小さな子供だってちゃんと知っているはず。

息を吸って吐くことことは立派です。もちろんそれだけでも、大変なことで、貴方の生には意味はある。でもそれはあなたを取り巻く人たちがいるからです。人類は社会的動物で、誰かに存在を認識されない生は苦しいでしょう。「自分」という存在には「他者」が必要なのだもの。

大好きな小さな飲食店たちには厳しい事態です。小さく応援の意味も込めて、訪れて珠玉時間をくれたカフェたちの紹介を、しばらくしていこうかと思います。
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日本のコーヒーが世界のコーヒーと少し違うところは、雑味を嫌うことです。ネルドリップとペーパードリップが日本に定着した背景だそうです。「日本のコーヒー」を淹れるのは、雑味を除くことがコツだそうです。不純物を削ぎ落した上澄みだけを、是とする文化。ずっと昔コーヒーの先生が教えてくれました。

実にこれを体現したようなすっきりした味わいのコーヒーを出すお店を紹介します。

市川屋珈琲さん: https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260301/26026585/

こちらは、2015年にできたばかりの新しいお店です。

でもさりげなく大通りを一本曲がったところにひっそりあって、昔からこの界隈で愛されてきた老舗の風情で、景色に溶け込んだお店です。観光地からもやや離れていて、老夫婦や、ちょっとおしゃれなお姉さんが本を読みながらコーヒーを飲んでいるような、そんなカフェ。

ここにはコーヒーは3種類しかなくて、いずれもブレンドコーヒーです。

大変澄み切った味わいのコーヒーです。

私は市川屋ブレンドを注文して、お代わりで青磁ブレンドをいただきましたが、両方とも本当に澄み切った味わいでした。市川屋ブレンドの方がややどっしり感があると感じましたが、「これが日本のコーヒーの真髄です」とイタリア人にお出ししたいようなコーヒー。カップのサイズも適度です。

きりっというわけでもなく、スッキリというわけでもなく、ともかく澄み切ったコーヒーなのです。でも物足りないところはない。

以前、Vermillion cafeについて書いていますが、あそこのコーヒーは、コクがあって土台もあります。いうなれば暖炉とソファー。

こちらのコーヒーは、清流を目前にのんびり飲みたいコーヒーです。

店主はイノダコーヒーで修業した人だそうで、おそらくその根を京都にしっかり持つ人です。ただ、イノダコーヒーのコーヒーとは、味はかなり違うコーヒーをいただけます。イノダコーヒーは割と苦くて、古き良き時代という雑味があると思います。パフェは美味しいですが昔ながらのモーニングなどは、正直おしゃれな給食の味だと思ってますが、評判のカツサンドは食べたことがないイノダコーヒー…。

いやいや、話がずれましたが、市川屋珈琲さん。サンドイッチメニューが主なのは、大正か昭和の時代の再現を目指してか、それともイノダコーヒーさんの影響かもしれないですね。季節のフルーツサンドは、澄んだコーヒーに良く合う、甘さを抑えたフルーツサンドでしたが、コーヒーと甘味の組み合わせでは、どっしりコーヒーに甘さの強い甘味を合わせるのが好みなので、こちらは、とても丁寧に作られたフルーツサンドだった、とだけコメントしますよ。

そもそも個人的には日本で提供されるコーヒーとサンドイッチの組み合わせにはあまり感心したことがないのです…。海外で食べるオープンサンドと食後のコーヒーなどはいいんですけれど、日本はコーヒーとお食事が一緒に出てきますので、食べ物の相性は、海外でのコーヒー文化の通りにすればよい、というわけではない気がします。

いや、違いました。サンドイッチ談義ではなく、市川屋珈琲さん。

このお店がもう一つとても素敵だったのは、店員さん。私は店内でゆっくり手紙を書いて、かなりの時間を過ごしましたが、お水が入っているか、困っていることはないか、実に丁寧に、でもプレッシャーは微塵も感じさせないマナーで、間隔も適度に様子を見に来てくれました。

そして帰る前にも、それは丁寧なおじぎをいただきました。

暖かいお店の雰囲気と、おもてなしの気持ちが伝わってくる店員さんと、そのすべてがあの澄み切ったコーヒーの味につながっているのではないかしら。

市川屋珈琲さんのコーヒーほど清流の流れが似合うコーヒーはなかなかないと思います。

明るくきれいな、それこそ奥入瀬渓流のようなコーヒーを味わってみたい方はぜひ訪問してみてください。どのブレンドを飲んでも、奥入瀬渓流が流れゆく中で顔を変えていくような、そういう違いで楽しめると思います。

頑張れば、清水寺からも、京都市博物館からも歩ける距離にありますよ。

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